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PIRÁMIDES   マヤのピラミッド
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                       PALENQUE  パレンケ 23m                        TIKAL ティカル 52m

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                        UXMAL ウシュマル 35m             CHICHÉN ITZÁ チチェン・イッツァ 34m

マヤと言うとピラミッドが連想されますが、マヤのピラミッドはエジプトの四角錐のモニュメント的なピラミッドと違い、写真の様に 基壇上には神殿が築かれ、基壇の形、神殿の様式、屋根飾り等 非常に変化に富みます。 マヤのピラミッドについて少し掘り下げてみましょう。

ピラミッドの大きさ  El tamaño de las Pirámides

マヤのピラミッドがどの位大きいのか、まずここから確認してみます。

始めにエジプトのピラミッドとの比較。 ギザにあるクフ王の大ピラミッドは高さ 146.6m (現在は 約136.9m)、底辺が 230.4m、 カフラー王のピラミッドは高さ 143.9m(同 136m)、底辺 215.3m、他にも高さ 100m を超えるピラミッドが幾つかあるようですから、 エジプトには敵いそうにありません。

アメリカ大陸ではテオティウアカン の太陽のピラミッドが有名で、現在の高さ は 65m 前後、基壇上に築かれていた神殿を含めると 75m位あったようで、これが一番高いと言われますが、実はNO.1 候補がもう一つ。  プエブラ州チョルーラ の 大ピラミッドは現在の高さが 60m とも 65m とも言われ、基壇の底辺は 400m と太陽のピラミッドの底辺 225m を凌ぎ、高さも 破壊される前は 80m 位あったとの事ですから、こちらが一番大きなピラミッドだったかもしれません。

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マヤのピラミッドの大きさを見る為に、代表的なティカルとチチェン・イッツァのピラミッドを、エジプトのクフ王の ピラミッド、テオティウアカンの太陽のピラミッドと比べてみました。 意外と小さいのには驚かされます。

マヤで一番高いとされるピラミッドは図示したティカルの1号神殿ではなく4号神殿の方で、高さも 60m を越して テオティウアカンやチョルーラに匹敵しますが、現在は基壇が土砂と木々に覆われて上部神殿が頭を突き出しているだけの状態です。

もうひとつマヤで一番高いとされるのが エル・ミラドール のラ・ダンタ ピラミッドで、時代も形状もティカルのピラミッドと比較がしづらいですが、高さは 72m とされます。 8世紀中頃のティカル4号神殿に対して ラ・ダンタは紀元前に遡るので、古いエル・ミラドールに軍配が上がるかもしれません。

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ラ・ダンタ ピラミッド。 右の図にあるように複合ピラミッドで上部が3神殿形式になっていて、左の画像は中央の神殿。

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 ティカル4号神殿。 基壇は崩れていて階段(左)が取り付けてあり、修復 された上部神殿(右)に登れます。

マヤのピラミッドをわかる範囲で高い順に並べてみました。 古い建造物は上部が崩れており、資料には現在の高さと当時の 高さが混在したりする為に精度は今ひとつですが。

 Tikal Templo IV      ティカル4号神殿       72.0m (現状 64.6m)
 El Mirador La Danta    エル・ミラドール ラ・ダンタ      72.0m
 Tikal Templo V       ティカル5号神殿            57.9m
 El Mirador El Tigre     エル・ミラドール エル・ティグレ   55.0m
 Tikal Templo III       ティカル3号神殿             54.9m
 Tikal Templo I        ティカル1号神殿            51.8m
 Calakmul Estructura II   カラクムル2号建造物         45m
 Caracol           カラコル カーナ神殿           43m
 Cobá Nohoc Mul      コバ ノホック・ムル            42m
 Xunantunich       シュナントゥニッチ A-6 カスティーヨ  40m
 Tikal Templo II       ティカル2号神殿             38.1m
 Uxmal Templo del Adivino ウシュマル占い師のピラミッド   35m
 Chichén Itzá El Castillo チチェン・イッツァ エル・カスティーヨ  34m
 Tikal Gran Pirámide 54  ティカル 54号大ピラミッド       34m
 Lamanai           ラマナイ 神殿 N10-43         33m
 Becán Estructura 9     ベカン 9号建造物           32m
 Edzná Edificio de los cinco pisos エツナ 五層の神殿      31.5m
 Yaxhá Templo 216     ヤシャー 建造物216           30m 以上
 Uxmal Gran Pirámide    ウシュマル 大ピラミッド       30m
 Moral-Reforma Edificio 14 モラル・レフォルマ 建造物14   27m
 Comalcalco Templo I   コマルカルコ 1号神殿        25m
 Cobá La Iglesia      コバ ラ・イグレシア            24m
 Cahal Pech         カハル・ペチ 神殿 A-1         23.5m
 Palenque Templo de las Inscripciones パレンケ碑銘の神殿  22.8m


エル・ミラドールの複合ピラミッドを除くと、鋭角的に聳えるティカルの神殿群がやはり一番高く、前述の通りティカル4号神殿が高さではテオティウアカン やチョルーラに比肩されますが、鋭角的な為に体積では全く比較になりません。 しかし同じ高さを小さな底面積で実現しているのはティカルの 技術力とも言えます。

カラクムルの建造物Ⅱ がティカルに続き、有名なチチェン・イッツァ や ウシュマルのピラミッドが 35m 位というのはそんなに 低いかなという印象で、パレンケの碑銘の神殿が たったの 23m というのは意外に思えます。 実際の高さと見た感じは随分違いますね。

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カラクムル建造物Ⅱ は 下からは一望出来ず、左が建物の下部、右が 途中から撮った上部です。  詳細はカラクムルのページで。 CALAKMUL

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カラコルのカーナ神殿も幅 100m の下部基壇の上に広場と3つの神殿ピラミッドがあり、下からは神殿上部が見渡せません。 先古典期のエル・ミラドールとは 時代が異なりますが、同じく3神殿形式と言えるかもしれません。 基壇が低いですがヤシャーの北のアクロポリスの3神殿形式を踏んでいます。

写真右下が基壇下部、写真左下は上部神殿から下を見下ろしたもの、写真上は基壇上部にある3つの神殿の正面から見たパノラマ合成です。    CARACOL



資料が無く高さ不明で上のリストに入れられなかった大きなピラミッドには次のようなものが含まれます。 高さがわかったらリストに 追加していきます。

 Calakmul Estructura I          カラクムル1号建造物
 Copán Templo 26 y 16         コパン 26号神殿、16号神殿
 Izamal Gran Pirámide          イサマル 大ピラミッド
 Mayapán El Castillo          マヤパン エル・カスティーヨ
 Kohunlich Templo de los Mascarones コフンリッチ 石碑の神殿
 Dzibanché Templo de los Dinteles   シバンチェ 鴨居の神殿
 Dzibanché Templo del Búho      シバンチェ ミミズクの神殿
 Chacchoben Templo 1 y 24       チャクチョーベン 1号、24号神殿


建造物単体としてはティカルに及ばないまでも複合建造物としてかなり大きいものがあります。 チャクチョーベンやイサマルでは 大きな基壇の上に広場がありその広場からピラミッドが築かれていて大基壇を含めた高さはかなりのものになります。

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左はチャクチョーベンの1号神殿ですが、右の写真にあるように大きな基壇上南西角に築かれ基壇上には他に幾つかの建造物が設けられています。  CHACCHOBEN

階段状にアクロポリスが築かれて各層に種々の建造物が築かれているケース (トニナ、テナム・プエンテ、エク・バラム、 ボナンパック等)では下の段からはかなりの高さになり、トニナは現状で 70m を超えティカル4号神殿をも凌ぎます。

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7層のアクロポリスのトニナは下の段から一番上の煙たなびく 神殿までの高さは 70m を超え、神殿の屋根飾りを復元すれば 80m 近くの複合建造物でした。 左は広場の先に広がるアクロポリスの下部、右が 5段目の基壇から望む アクロポリス上部です。  TONINÁ
色々な形のピラミッド   Variedad de las Pirámides

ピラミッドはただ高いだけでなく その形状も変化に富み興味深いものがあります。 以下 写真でいろいろなピラミッドを ご紹介します。 写真を見るだけでも楽しいと思いますが、詳細は夫々の遺跡のページを参照下さい。

Guatemala

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ティカル1号神殿とグランプラサを挟んで向かい合う2号神殿(左)と 中央アクロポリス南にある5号神殿。 TIKAL 

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ヤシャーの 216号神殿(左)は 30m を超えるようです。 全く様式の違う ピラミッドも修復中でした。  YAXHÁ 

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ヤシャー湖畔のトポシュテのピラミッド。 TOPOXTÉ  ティカル北方のウアシャクトゥンのグループA。 UAXACTÚN 

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古典期後期カクチケル族の都イシムチェ。 IXIMCHÉ  古典期後期ポコマム族の都ミスコ・ビエホ。 MIXCO VIEJO 

Belice

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ベリーズ・アルトゥンハの B-4 ピラミッド。 ALTUN HA     ラマナイ遺跡のピラミッド N10-43。 LAMANAI 

                              Honduras

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シュナントゥニッチのエル・カスティーヨ。 XUNANTUNICH   コパン周辺部のエル・プエンテ。 EL PUENTE 

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神聖文字のコパン 26号神殿(左)と ロサリラ神殿等の古い神殿の上に立つ 16号神殿(右)。   COPÁN 

El Salvador

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エルサルバドル・タスマルの B-1。 TAZUMAL      サン・アンドレスの建造物3。 SAN ANDRÉS
共に日干し煉瓦で作られたピラミッドです。


Quintana Roo

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シバンチェの鴨居の神殿(左)は上部神殿の木製の鴨居に神聖文字が残されて いました。 DZIBANCHÉ
コフンリッチの仮面の神殿は見事な彩色漆喰仮面で有名です。  KOHUNLICH 


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コバのノホック・ムル(左) 写真では小さくみえますが、42m と巨大です。    同じくコバの シャイベ(右)は小振りの建造物で道標の役割だったようです。   COBÁ 

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ムイルのカスティーヨ(左)は 17m ですが、鋭角的で見栄えがします。  MUYIL   カリカの建造物 Ⅲは円形でユニークなピラミッドです。  CALICA 

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トゥルムにある典型的な東海岸様式のピラミッド。  TULUM    エル・メコにも 後古典期のピラミッドが残り、階段基部には一対の蛇がありました。  EL MECO

Campeche

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バラムクには有名な漆喰彫刻の他にペテン様式のピラミッドもあります。  BALAMKÚ    
城塞都市のベカンにも 32m の高いピラミッドがあります。  BECÁN


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シュプイルの建造物 I は3つの塔を持つ典型的なリオ・ベック様式の神殿ピラミッド です。  XPUHIL  
ジビルノカックの建造物 A-1 はチェネス様式の神殿ピラミッド。  DZIBILNOCAC


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エツナの五層の神殿は各層に部屋が配されたユニークなピラミッドです。   エツナには他に発掘調査中の大きなピラミッドがあります。  EDZNÁ

Chiapas

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コミタン周辺のチアパス東部高地にも独特の様式のピラミッドがあり、 左はチンクルティック グループAの神殿。  CHINKULTIC    右はテナム・プエンテの建造物7。  TENAM PUENTE

Tabasco

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ベラクルス州コマルカルコには材料がレンガのユニークなピラミッドがあります。(左)   COMALCALCO 
新たに公開が始まったモラル・レフォルマのピラミッド。(右)   MORAL-REFORMA 


                              Yucatan

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ウシュマシンタ川下流域にあるポモナのピラミッド。(左)   POMONÁ 
ユカタン北端の交易都市 シュカンブの仮面の神殿。(右)   XCAMBÓ 


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ジビルチャルトゥンの7つの人形の神殿。 (左)  DZIBILCHALTÚN    ウシュマルの 占い師の神殿は典型的なプーク様式装飾を持つ楕円形のピラミッドです。  UXMAL

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チチェン・イッツァにはカスティーヨ以外にもオサリオと呼ばれるマヤ・トルテカ 様式のピラミッドがあります。  CHICHÉN ITZÁ     エク・バラムには後方が円形の 16号建造物があります。  EK'BALAM

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イサマルの大ピラミッドは大きな基壇上に載った丸い基壇を持つピラミッドです。 IZAMAL   マヤパンのカスティーヨはチチェン・イッツァのカスティーヨを模した後古典期のピラミッド。  MAYAPÁN

ピラミッドの目的、用途  El motivo de las Pirámides

最後になりましたが、ピラミッドがどう言う目的で作られ、どのように使われたのか、考えて見ましょう。

エジプトのピラミッドについても諸説があるように、マヤのピラミッドについても一つの明快な答えというものはありません。  しかしエジプトのピラミッドは外壁に階段が無いのに対して、マヤのピラミッドには必ず階段がありますから、儀式等何らかの場面で 使用されたと考えるのが自然です。

マヤのセンターには支配者階層が住み、一般民衆は周辺の粗末な住居に住んで農耕等に従事していたようですから、センターにある神殿は 支配層が一般民衆を統治する為に用いられたと思われます。 太陽が生き続けるように、雨が降って水がもたらされるように、或いは 豊かな収穫を願って、香を焚き、祈りを捧げ、生贄を奉じた場所が神殿だったでしょうか。 王の即位や葬儀、戦勝祈願等も行われた かも知れません。 いずれにせよ神殿と言う事でマヤの宗教とは密接に結びついていて、多くのピラミッドの基壇が九層からなり、 マヤの九層からなる冥界思想を表しているとも言われます。

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     シバンチェのミミズクの神殿。         墳墓の断面図。    DZIBANCHÉ

パレンケの碑文の神殿から 1952年にパカル王の墓が発見されるまでは、マヤのピラミッドは墳墓ではないと言うのが定説だったそうです。  シバンチェのミミズクの神殿でも、基壇上の神殿床面から地下の墓室に通じる階段が見つかり、これらのケースではピラミッドを 建造する時から埋葬が前提にされていたようです。 しかしピラミッドは全て墳墓か と言うとこれも違うようで、マヤでは居住空間にも 埋葬がよく行われましたから、偉大な王の墳墓も神殿として活用されたと言うところでしょうか。

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     ウワシャクトゥンの 観測点になるピラミッド E VII Sub(右) と春秋分と夏至冬至を 示す建物(左)。

ティカルの失われた世界(Mundo Perdido)にある 54号大ピラミッドや、ウワシャクトゥンのピラミッド E VII Sub は 太陽の観測に用いられたピラミッドと言われます。でもこれはどちらかと言うと特殊な例でしょうか。 UAXACTÚN


マヤのピラミッドがどのように使われていたのか、明快な記録は残されていません。  マヤの統治者が一般民衆を前に儀式、祭礼を行っていたと思われますが、実際どのような様子だったのか、 遺跡にたたずんで想像を膨らませてください。


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