MASCARONES
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MASCARONES DE KOHUNLICH

                 コフンリッチ遺跡の巨大仮面
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    (Edificio A-1 o Templo de los Mascarones)

コフンリッチ遺跡は 2002年、2007年、2014年に次いで今回4回目。 遺跡自体は大きくは変わっていないので、 詳細は 遺跡のページ を参考頂き、このページでは 仮面の神殿の巨大漆喰彫刻に絞って詳しく見ていきます。

  (訪問日 2017年 2月 1日)
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仮面の神殿   Templo de los Mascarones
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  (Lado frontal oeste del Templo de los Mascarones)

遺跡に入り石碑の広場を抜けて東の高台の上に神殿があり、大きな保護の屋根が見えてきます。 1968年に発見され 90年代から本格的に 発掘、修復されて保護された漆喰彫刻の仮面がこの屋根の下にあります。

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  (Lado norte del Templo de los Mascarones)

これは西を向いた神殿の北側面で、正面は保護の屋根のために中央階段しか見えませんが、横から見るとペテン様式のピラミッド神殿が確認できます。 古典期前期に遡る漆喰装飾がペテン様式神殿に施されていた訳です。

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  (Lado noroeste del Templo de los Mascarones)

屋根の下を覗いてみましょう。 中央階段の横に巨大仮面が見えてきます。

南側の仮面  Los mascarones del lado sur
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  (Tres mascarones al lado sur)

中央階段南側(階段の右)には上段から三段目まで仮面が3つ残されます。

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  (Tres mascarones al lado sur)

3つの仮面を上から順に。 本当は正面から撮れると良いのですが。

漆喰彫刻の大きさはそれぞれの段により異なり、サイズの資料は見当たりませんでしたが、三段目のもので高さは 2m 近くありそうです。

北側の仮面  Los mascarones del lado norte
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  (Dos mascarones al lado norte)

中央階段北側(階段の左)は上段の仮面が失われ二段目と三段目の仮面2つが残っています。

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  (Dos mascarones al lado norte)

2つの仮面の個別写真。 三脚を立てて真っ正面から撮りたいですが、中央階段から斜め方向でしか撮れません。

漆喰彫刻は草葺きの屋根で保護されていますが、自然の空気に触れて吹き込む雨も多少有るでしょうし、 劣化を防いで現状を維持するだけでも容易ではありません。 特に彩色を保つのは難しく、定期的に補修が行われているそうですが、 行く度に微妙に色が変化しているような気がします。

残された5つの仮面  Cinco mascarones resscatados
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  (Cinco mascarones rescatados en cuatro niveles)

横からの写真ですが一つにまとめてみました。 上段の北側と四段目の仮面は既に失われていて、8つあった仮面のうち5つが現存します。 残された仮面からはそれぞれに異なる表情が見られ、太陽神キニチ・アハウの姿をとっていますが、 実在した王を表しているという解釈もあるようです。

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  (Detalle de la parte de cuencas oculares)

二段目と三段目の仮面には大きな目が表され、眼窩に太陽を示す標が三段目の2つの仮面に認められます。

仮面の表すもの  Detalle del Mascaron
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  (Dibujo de Mascarón, Arqueología #14)

1500年位は経っている漆喰彫刻で 残っているだけでも凄いのですが、部分的に剥落していて図像が完全には読み取れません。 やはりここは模写に頼るほかありません。 Arqueología Mexicana #14 Jul-Ago 1995, P.32 に模写があったのでお借りしました。  Arqueología Mexicana Edición Especial #44, P.40 の解説を元にこの漆喰彫刻の意味するところを見てみます。

幾何学模様が描かれた下側の帯は 大地の豊穣に関連づけられる蛇の胴体を象徴しているそうです。

仮面と蛇の胴体の帯の間には下顎の肉が削げたジャガーの頭が配され、このジャガーは冥界を通る夜の太陽を表し、 マヤの宇宙観では夜の太陽は暗闇、戦争、生け贄の死、そして湿って肥沃な土壌と関係したものでした。

中央に配された仮面はマヤの王が豊作を祈願して行う儀礼に付ける被り物、耳飾り、顎帯をつけ、 夜のジャガーの上の地上界に置かれます。 ふたつの仮面の眼窩には太陽の人、星の人を示す標が残され、 太陽や金星の仮面を付けたマヤの王と考えられそうです。

仮面の上の帯は空を表し、漆喰彫刻全体で冥界、地上界、天界とマヤの宇宙観が示され、 その中で地上界にあって豊穣を祈願する太陽神を装った王が描かれていると言うのが全体の構図になるようです。



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      (Reproducción de Máscara en Gran Museo del Mundo Maya de Mérida)

最後にメリダのマヤ大博物館にある複製をご紹介します。 どの位正確に複製してあるのか少し疑問なのですが、 消えた部分が補修され当時の彩色が再現されていてイメージが湧きます。

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  (Reproducción de Templo de los Mascarones en Gran Museo del Mundo Maya en Mérida)

これがマヤ大博物館にある複製の全体で、マヤ室の最後、出口近くにあります。 現地では完全に失われている上段北側(左側)の 仮面が復元されていますが発見された頃はまだ存在したのでしょうか? 中央階段の角度は実際の神殿とは異なり、博物館の展示室の設計に 合わせて作り替えられたようですが、復元全体はどの程度実物に忠実なんでしょう?

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  (Cuatro mascarones reproducidos)

撮影場所に制約がある現地と異なり、仮面が正面から撮影できるのが利点です。 4枚写真を撮って並べて比較してみました。 それぞれ顔に個性が見られて歴代のコフンリッチ王という推論が頷けるような気がしました。

       = ☆ = ☆ = ☆ = ☆ = ☆ = ☆ = ☆ = ☆ = ☆ =


コフンリッチのように神殿を仮面の漆喰彫刻で飾るのは古典期前期(250-600年)までに特徴的な様式で、古典期後期に入ると石碑や祭壇に メッセージを残す方法に変わっていったそうです。

巨大仮面の様式は先古典期のエル・ミラドールを始めとしてウアシャクトゥンやティカルなどペテン地方に多く見られます。 古典期前期以前のものなので既に多くは失われてしまったでしょうが、 ベリーズの ラマナイ遺跡セロス遺跡 やユカタン州の アカンケー遺跡 の巨大仮面が有名で、他にも古くからの遺跡では 仮面の一部若しくはその痕跡が見られることがあり、時代考証の手掛かりとしても有効です。



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