(Fachada Principal de Estructura 35 sub)
アクロポリス四層目左翼(西側)にある建造物 35 sub 正面を上部に嵌め込まれた7体の人物像が入るように写してみました(左端の人物像は喪失されています)。
中央で玉座に座っているのがウキット・カン王と思われますが、残念ながら頭部と左腕は残っていません。
手前の牙は右側にもう3本並び、入口の奥が部屋 35 で、奥の部屋 49 に続き、ここがウキット・カン王の霊廟です。
(Tapa de Bóveda 19, Cuarto 35, Gran Museo de Maya de Mérida)
部屋 35 のアーチ天井上部を閉じる蓋石 19 にはサク・ショク・ナ(Sak Xok Naah)の文字が記され、スペイン語訳は Casa Blanca de Lectura (読書の白い家)となり、
生前に王が使用していた部屋と理解されるそうです。 日本語にすると「王の書斎」といったところでしょうか。 建物の奉納日は 797年か 802年になるようです。
(Tapa de Bóveda 15, Cuarto 49, Gran Museo de Maya de Mérida)
こちらは蓋石 15 です。 王の遺体が安置された奥の部屋 49 の梁にあった蓋石で、文字部分はトウモロコシの神の姿をしたウキット・カン王と解読され、
描かれているのは王その人で、切れた上唇は戦いで負った傷と考えられるようです。 蓋石にはカウィール神を描くのが一般的ですが、
使用者であり且つ被葬者だった王の姿が描かれたこの蓋石は何時作られたものか…、残念ながら暦は添えられておらず、日付は不明です。
蓋石 15 は蓋石 19 と共にメリダのマヤ大博物館に展示されています。
(Estructura 42 sub)
建造物 35 sub の右側に並ぶ建造物 42 sub には壁面上部の漆喰装飾が当時のままに残り、こちらに目を奪われがちですが、入口右側の軒柱内側に
幅 40cm位の興味深い壁画が残されます。 実際過去2回の訪問では見落としていました。
(Pintura Mural de Estructura 42 sub)
壁画の前に立てば写真は簡単ですが柵の内側には入れません。 正面写真が撮りたいので横から望遠レンズで狙いました。 貴族に囲まれたウキット・カン王が
活き活きと描かれているようです。
(Dibujo de la pintura, Exhibición Lak'iin)
メリダのカントン宮殿(地方考古学博物館)で ユカタン州東部マヤの特別展が開催されていて、この壁画の説明パネルがありました。
説明の為にパネルにあった模写をお借りします。
建物の壁面上部からこの場面が建造物 42 sub で、 戸口に座るウキット・カン王が周辺の貴族の訪問を受けている場面と考えられ、
壺を背負って階段を登る召使やその後ろにジャガーの毛皮と思われる貢物を持った別の貴族も見えます。
王に向かい合った3人は訪問者で、後ろの2人は王の臣下でしょうか? 周りにマヤ文字もあったそうですが、残念ながら薄れて読み取れないそうです。
(Ajuar Funerario, Gran Museo Maya de Mérida) (Perforador Ritual)
霊廟には辰砂で覆われた王が埋葬され、周囲に 食べ物や飲み物を納めたと思われるアラバストロを含む 21個の容器や、数多くの王の大切な持ち物が残され、
副葬品の数は 7000点を超えるそうです。 代表的な副葬品はメリダのマヤ・大博物館に移され、縦長の大きなショーケース(写真左)
と左右の小さなショーケースの3つにまとめて展示されています。
右側に拡大した骨製の道具は放血儀礼で穴を開ける為に用いられるもので、王の胸の上に左手で持った形で発見されたそうです。
刻まれた文字から持ち主がウキット・カン王であり 骨は父親と考えられるウキット・アーカンの大腿骨である事がわかり、
副葬品の中でも最も興味深いもののひとつになります。
(Copa de Cacao del Rey)
もうひとつの代表的な副葬品がこの漆喰が施され図像と文字が刻まれた壺で、カカオ飲料を入れる容器で持ち主がタロール(エク・バラムの王朝名)の
神聖王ウキット・カン・レク・トク王である事が記されているそうです。
(Colgante de pez del Rey)
王の胸の上に置かれた魚を模った貝製ペンダントにも持ち主がウキット・カン王である事が記されているそうです。
(Ajuar Funerario, Gran Museo Maya de Mérida)
これは大きなショーケースの左右に置かれた小さなショーケースで、左のショーケース(上の画像)にはアラバストロの容器が、
右のショーケース(下の画像)には王の装飾品が展示されます。
(Colgante de Rostro del Rey y Broche de Rana de Tumbaga)
左は王の容貌を彫ったと思われる骨製のペンダントです。 王の遺骨と歯の調査から いろいろな病を患い虫歯もひどく、戦いの傷による歯の欠損もあり、
あまり人相が良くなかったなんていう推測もあります。
多くの翡翠製の装飾品に混じって金銅製の蛙のブローチもあり、オアハカか或いはコスタリカやパナマ辺りとも交易が行われていたと考えられます。
(Dibujo reconstruido de 3-6 niveles de Acrópolis)
これはカントン宮殿の特別展示に置かれていたアクロポリス三層目から上の想像復元画で、大変参考になるのでここに紹介させて頂きました。
三層目左翼(西側)に 35 sub のサク・ショク・ナがあり、階段を挟んで反対側に色付けされた 部屋 29 が描かれ、この内部からは「96文字の壁画」が発見されています。
(Estructura 29 sub)
29 sub は 2008年に来た時は立ち入り出来ませんでしたが、その後修復作業が進んだのか、今回保護の屋根を取り付けて公開されていました。
サク・ショク・ナとは造りは類似していますが、壁面装飾は異なるようです。
(Escultura de Reina)
戸口の前には頭部は失われていますが玉座に座り着飾った女性の石造彫刻が置かれ、これは五層目の部屋 55 の前辺りで見つかったものだそうですが、
部屋 22 の壁画にも登場する ウキット・カン王の母になる女王のものでしょうか。
(Esquina decorada de quinto nivel)
2002年に初めてエク・バラムに来た時は五層目の東側階段脇に漆喰彫刻が見られました(写真右)。
五層目でアクロポリスの天辺を飾った矩形のピラミッドの角に施されていた漆喰装飾の一部で、上の復元画に描かれていますが、
現在は保存の為埋め戻されているようです(写真左)。
(Columnas Redondas de quinto nivel)
五層目両翼に入口が円柱で飾られた神殿があり、柱だけ現在も残されます。 右は 2002年に来た時に撮ったものですが、現在は立ち入りが制限され、
柱自体 手前の植生に邪魔されてあまりよく見えません。
(Quinto Nivel de Ala Oeste bajo techado)
上の漆喰彫刻と円柱は左翼東側で、西側はと言うと更に大きな保護屋根に覆われて辛うじて覗き見出来る程度ですが、東側同様円柱があります。
階段脇には東側より完全な形でピラミッド角の壁面装飾がある筈ですが非公開で埋め戻されているのかもしれません。 写真右は Arqueologia #76
で紹介されていた壁面装飾で、丸く仕上げられた角に大地の怪物が漆喰彫刻で表現されていました。
(Decoración de Estuco con red fina de protección)
他にエク・バラム遺跡で変わった事と言うと、これは残念な方ですが、サク・ショク・ナの壁面装飾が目の細かい網で覆われていた点で、
上部一番右の人物像を除いて壁面下部まで全て網が被っています。 保存の為に止むを得ないでしょうが、ちょっと残念です。
この写真で右から2体目は網を被っているのがわかるでしょうか。
(Figura del Inframundo, Gran Museo Maya de Merida)
(Esculturas de Personaje, Gran Museo Maya de Merida)
これはメリダのマヤ大博物館に展示された他のエク・バラムからの出土物です。 上の石造彫刻はウキット・カン王の霊廟近くの壁面を飾ったものと思われ、
蛇の兜を付け骸骨を腰に付けており、冥界と関連付けられるようです。 下はエク・バラム近くのトウモロコシ畑で見つかったエク・バラム王と呼ばれる石彫りです。
(Cabeza de hombre-serpiente, Exhibición Lak'iin, Palacio Canton)
蛇の口から顔が覗く石像彫刻で、漆喰が施されていたようです。
(Representación de 'Kawiil, Escultura denforma de caparazón de tortuga)
左はカウィール神を彫った石造物で、アクロポリスから。 右は亀の甲羅が彫られた石造物で「柱 1」の近くで見つかっているようです。
Protector de brazo para el juego de pelota, Aro del juego de pelota)
左は球戯で腕にはめる防具を現した石造物で、持ち主の名前は読めないようです。 防具は実際は革などで作られていました。 右は球戯の的になる環で、
遺跡の球戯場には残されていませんが、片側で破片になっていたものを修復したものが展示されていました。
(Cráneos y Cabeza humana)
アクロポリスの建物を飾った髑髏と人面の彫刻、生と死を表すようです。
(Incensario y Vaso de Ukit Kan Le'k Tok')
左はエク・バラムからの香炉、漆喰で下地を塗ってから彩色されたそうです。 右は漆喰彩色された壺で、右の壺にはウキット・カン王の文字が描かれています。
(Vaso con popote)
球戯を行うウキット・カン王が刻まれた口付壺で、分かっていれば影を避けて撮ったのですが、説明文を読んだ時は後の祭りでした。
説明パネルで右がウキット・カン王、左はイグアナの被り物を付けた出身不明の王?
(Olla y Cajete con asas)
エク・バラム出土の取っ手付き鍋と深鍋。 チチェン・イッツァの様式に類似し、影響を与えたと言われます。
(Cabeza de personaje estucada)
建物を飾っていた石造りの頭部と顔。 鮮やかに彩色され被り物を含めた容貌が偲ばれます。
(Cráneo y Escultura de personaje con pez)
左は頭蓋骨で目から上は漆喰が剥がれ落ちて下書きが見えるそうですが?
右は魚を抱えた人物像で、エク・バラムでは魚を含めた海の生き物が度々壁面装飾、彫刻、装身具に現れるそうです。
霊廟で王の胸に置かれた貝製ペンダントも魚で、魚はコルビーナ(イシモチ)で王の好物だったという説明もあります。
(Escultura de un torso con pendiente de pez)
こちらは魚のペンダントを付けたトルソで、魚のペンダントと言うとウキット・カン王が思い出されますが?
(Pectoral cabeza de zopilote rey, Anillo y Pendientes de colmillos de jabalí)
左はハゲタカが描かれた貝製ペンダント、右は骨製の指輪(上)とイノシシの牙で出来たペンダント(下)です。