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EL LENGUAJE DE LA BELLEZA   美の言葉
  MUSEO MAYA DE CANCÚN   カンクン・マヤ博物館
カンクン・マヤ博物館 第三室は特別展示の為のスペースで、2014年 1月の訪問時には "Mayas - El Lenguaje de la Belleza" (マヤ、 美の言葉) と題した特別展が開催されていました。  メキシコ全マヤ地域から集められた マヤの遺物 130点の展示を通し、マヤの芸術性を説明するもので、マヤ特有の世界観、美意識を 現代に伝える興味深いものでした。

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   (訪問日 2014年 1月 9日)  画像

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           (Entrada a la tersera Sala)

キンタナ・ロー室、マヤ室を抜けると、第三室の入り口です。 特別展のロゴと説明パネルがあり、石の彫刻や彩色土器等、 残されたマヤの遺物を通してマヤ人の体を4つの視点から見ると解説されます。 
           体をキャンバスに変えて
           体を着飾って
           体の反対側の動物たち
           神々の体

4つの視点を少し意訳するとこんな感じでしょうか。

体 をキャンバスに  EL CUERPO COMO LIENZO
体をキャンパスにするという事は、要するに体に細工を加えて芸術表現を行うという意味で、頭蓋変形や歯牙変工、 更に耳飾りや口飾りなどの為の穴あけ、刺青、顔に刻みを入れて傷痕を残す乱切りなどを意味しています。

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  (Portaestandarte, Chichen Itzá, Posclásico temprano 900-1200, Palacio Cantón)

まず展示室の中央に置かれた、チチェン・イッツァの旗持ちの彫刻。 カントン宮殿では壁際に置かれていましたが、 ここは一回りしてじっくり見れました。

体の特徴を捉えた芸術的な石彫りで、頭蓋変形された頭は髪の毛が前で切り揃えられ、耳飾りをつける耳たぶの穴が 残されます。 胸に風の印を刻んだ飾りをつけ、足にはサンダルとアンクレットが細かく彫刻されていました。  全体的に赤や青で彩色されていたようです。


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   (Cabeza de hombre, Yucatán, Clásico Tardío 600-900, Palacio Cantón)

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   (Cabeza de hombre con tocado, Ek Balam, Vaso en forma de rostro, Yucatán,
                       Clásico Tardío 600-900, Palacio Cantón)

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   (Ladrillos con perfíl de anciano y hombre, Comalcalco,
                   Clásico Terminal 900-1000, Museo de Comalcalco)

漆喰彫刻で作られた人面は顔の特徴を捉え、彩色も施されてなかなか芸術的です。 中央左のエク・バラムからの人面は 頭蓋変形され大きな頭飾りをつけ、上唇には口飾りをつけています。

下段の横顔が線刻された煉瓦はコマルカルコからで、左は老人が、右は大きな頭飾りをつけた貴族が描かれます。  (時代と出展元はスペイン語の写真説明を参照ください。)


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 (Rostros con escarificaciones, Comalcalco, Clásico Tardío 600-900, Museo de Comalcalco)

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(Figurilla de hombre con escarificaciones, Isla de Jaina, Clásico Tardío 600-900, INAH Campeche)
(Silbato en forma de hombre con escarificaciones, Jaina, Clásico Tardío, Museo de Hecelchakán)

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(Figurilla de hombre ricamente ataviado, Isla de Jaina, Clásico Tardío 600-900, INAH Campeche)
(Figurilla de hombre con escarificaciones y barbas, Isla de Jaina, Clásico Tardío, INAH Campeche)

上段の頭部の漆喰彫刻は2つともコマルカルコからで、口元と眉間に乱切りが認められます。

中段と下段の人形はハイナからで全て顔に乱切りが施されています。 左下は額と頬に精巧な乱切りが施され、頭飾り と服装から高位の貴族のようです。


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(Figurilla de mujer con limado dental, Isla de Jaina, Clásico Tardío 600-900, Museo Campeche)
(Cabeza con limado dental y escarificación, Chiapas, Clásico Tardío 600-900, Museo Chiapas)
(El cuerpo enfermo, Isla de Jaina, Clásico Tardío 600-900, INAH Campeche)

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(Vaso con inscripciones, Yucatán, Clásico Tardío 600-900, Palacio Cantón)
(Ladrillo con perfil de hombre y banda, Comalcalco, Clásico Terminal, Museo Comalcalco)

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(Figurillas de mujer, Figurilla de personaje con abanico, Figurilla de mujer con alto peinado, Isla de Jaina, Clásico Tardío 600-900, INAH Campeche)

上段左の女性の土偶は歯を削って前歯を強調してあり、中央の人面は同様の歯牙変工に加えて額に乱切りがあります。  体の変形には芸術表現ではなく病気の跡も見られるという事で上段右の彩色された土偶には慢性的な肝臓病からくる腹水が 認められ、臍が出ているそうです。

人の体は芸術的なマヤの象形文字にも用いられ、人の顔や手、拳は文字を構成する要素になり、中段左の壺に 刻まれたマヤ文字には顔や手などが認められます。 右のコマルカルコの煉瓦には人物の横顔に加えて文字列も 刻まれます。

下段は左から女性の土偶、ウチワを抱えた人物と髪を高くまとめあげた髪型の女性の土偶。 テーマと どういう関連か?

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    (Máscara funeraria, Rovirosa, Quintana Roo, Clásico Tardío, INAH Quintana Roo)

これは以前グアダラハラの "Rostro de la Divinidad" で見た、ロビロサからの翡翠の葬送面で、
ここでまた見れるとは…、嬉しい再会でした。

「体の変形」 の切り口でこの仮面が取り上げられるは、仮面が示している斜視が理由です。 故意に斜視になるよう マヤの子供が目の前に重しを吊り下げられていたと、16世紀にマヤを征服したスペイン人の記録にあるそうで、 マヤ人の間では太陽神キニチ・アハウを想起させる斜視がもてはやされたそうです。

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  (Máscaras funerarias, Dzibanché, Clásico Tardío 600-900, INAH Quintana Roo)

そして "Rostro de la Divinidad" に展示されていた葬送面がもうふたつ、シバンチェからのものです。 古典期の 王の葬送に際しては魔よけの緑の仮面が納められる事がありますが、このシバンチェの仮面を見ても 頭を平らにする 頭蓋変形と 斜視が認められ、実在の王の顔つきを模して作られたとも考えられます。


体を着飾って   EL CUERPO REVESTIDO
マヤの人達は直接 体に変形を加えるだけでなく、様々な衣装、装飾品で身を飾り立てており、その様子は 残された遺物に見ることができます。

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   (Figurilla de hombre con alto tocado, Figurilla de hombre con capa, Isla de Jaina,
                    Clásico Tardío 600-900, Museo de Hecelchakán)
 (Figurilla de hombre ricamente ataviado, Isla de Jaina, Clásico Tardío, INAH Campeche)

乱切りが施された人形はハイナ島からのものでしたが、古典期後期から後古典期前期にかけてハイナは巨大墓地として 使われたようで、ここから見つかる副葬品には非常に精巧に作られた土製の小像が多く、当時の様子を鮮やかに 現代に甦らせてくれます。

左は高い被り物をつけた人物、その右は長いマントをまとい肩に飾りをつけた貴族でしょうか、一番右は彩色が 残るだけでなく豪華な衣装、頭飾り、装飾品を持ち、おそらく王族でしょう。

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 (Silbato en forma de hombre con capa y sandalia, Figurilla de personaje con gran tocado,
           Figurilla de hombre con taparabos, Clásico Tardío, INAH Campeche)
  (Cuenco con representación de hombres con tocado, Yucatán, Tardío, Palacio Cantón)

写真左の呼子と人形もハイナからで、鋳型で作られたもののようで少し質が落ちますが、衣装、被り物が当時の 人々の様子を伝えます。 右の器にも被り物をつけた人物が活き活きと描かれています。

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          (Escultura antropomorfa con tocado movil de Chaak, Chichén Itzá,
                   Posclásico Temprano, 1000-1250, Palacio Cantón)

これは後古典期に入ってチチェン・イッツァからの着飾った貴族の石像で、水、戦争、犠牲の神であるチャークの被り物 をつけており、被り物は取り外しが出来るように作られています。

この石像は冒頭で紹介した同じくチチェン・イッツァからの旗持ちの石像同様、以前はカントン宮殿の常設展示品 でした。

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 (Figurilla de mujer ricamente ataviada, Figurilla articulada de mujer con atuendo bordado, Figurilla de mujer con tocado, Isla de Jaina, Clásico Tardío 600-900, INAH Campeche)

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(Torso de mujer con huipil ricamente decorado, Lagartero, Clásico Tardío, Museo Chiapas)
  (Figurilla de mujer con huso de hilar, Isla de Jaina, Clásico Tardío, INAH Campeche)

左下の首のない座像はチアパス州のラガルテロからですが、他は全てハイナからのものです。 身に着けた衣装は 織り込まれた図柄まで表現され、土偶では色が落ちていますが、鮮やかな色彩を持っていたようです。 インディゴ の藍色やカイガラムシから採った赤等で染色された糸を用い、織り方も非常に工夫されていたと考えられています。

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(Figurilla de mujer con larga túnica y collar, Isla de Jaina, Clásico Tardío, Museo Hecelchakán)  (Sonaja en forma de mujer con sombrero,  Silbato en forma de mujer con manto, Isla de Jaina, Clásico Tardío, INAH Campeche)

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(Figurillas de personaje con collares y brazaletes, Isla de Jaina, Clásico Tardío, INAH Campeche)

これも全てハイナからの出土品で、上段は長いチュニックを来た女性の人形、帽子を被った女性のソナハ(マラカス)、 長いマントを羽織った女性の呼子です。 下段は全て頭飾りに首飾り、ブレスレットをつけた人物の人形です。

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        (Fragmento de figurilla con tocado en forma de rosetón, Tenam-Rosario,
           Clásico Tardío 600-900, Centro Cultural de los Altos de Chiapas)

これはチアパス州テナム・ロサリオから薔薇形装飾の被り物をつけた小像の頭部です。 マヤでは頭飾りは高い地位を 示し特に重要視されたと説明にありますが、この像の表情と仕上げはちょっと息を飲む様な美しさで驚かされます。  鼻に開けられた穴が何を意味するのか気になります。

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(Plato con representación de personaje en trono, Xcambó, Clásico Tardío, Placio Cantón)
(Plato con representación de personaje con plumas, Yucatán, Clásico Tardío, Placio Cantón)

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      (Cajete con personaje con tocado)     (Figurillas de jugador de pelota,
                Isla de Jaina, Clásico Tardío 600-900, INAH Campeche)
                                 
珍しい鳥の羽は富や権力の象徴で、美や豊穣を現すものとしてマヤの人々に尊ばれました。 被り物、盾、槍、輿の飾り、 うちわ等に色とりどりの羽が用いられ、衣服の織物にも羽が織り込まれます。 鳥の羽は脆い為に 完成品としては 何も残っていませんが、彩色土器の絵柄や彫刻の図柄から当時の様子を知る事が出来ます。

右上のハイナの人形は球戯プレーヤーですが、鳥の羽の被り物をつけているようです。 下の大きな頭飾りをつけた ハイナの人形4点からも鳥の羽がふんだんに使われていた様子が窺われます。 様々な色の羽が使われますが、 ケツァールの長い青緑の尾羽が最も珍重されたようです。

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 (Figurillas de mujer ricamente ataviada, Clásico Tardío 600-900, INAH Campeche)



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 (Sartal, Chacchoben,  Collar, Kinichná, Clásico Tardío 600-900, INAH Quintana Roo)

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 (Orejeras, Dzibanché, Kohunlich y Kinichná, Clásico Tardío 600-900, INAH Quintana Roo)

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(Pendiente con represenacion de rostro, Dzibanché, Clásico Tardío 600-900, INAH Quintana Roo)
(Orejera de Pirita tallada, Xona limitrofe Campeche-Quintana Roo, Clásico Tardío, INAH Q. Roo)

鳥の羽を用いた装飾品は残りませんが、翡翠などの鉱物を加工した装飾品は残ります。 キンタナ ロー州南部の遺跡から 発見された装飾品が集められていました。

上段の翡翠や貝を用いた首飾り類はチャクチョーベンやキニシナなど、中段の翡翠の耳飾りはシバンチェ、コフンリッチ、 キニシナから、下段の貝製のペンダントはシバンチェ、黄鉄鉱製の耳飾りはカンペチェとキンタナローの州境からと 出所が説明されていました。 全て古典期後期のものになります。

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(Mascara funeraria y Orejeras, Estructura II-D Calakmul, Clásico Tardío, Museo Campeche)

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(Collar y Pendiente para la Mascara funeraria de Calakmul, Clásico Tardío, Museo Campeche)

カラクムルからの葬送面とペンダント付きの首飾りも併せて展示されていました。 サン・ミゲル砦にあるカンペチェ 考古学博物館の収蔵品ですが、特別展示会の目玉として引っ張りだこのようで、ついぞカンペチェでお目にかかった 事がありません。 仮面は 2007年にはインカ・マヤ・アステカ展で日本へ来ていました。 2011年にカンペチェへ 行った時はカナダの特別展に持ち出されていて、今回 2007年から7年振りの再会になりました。 葬送面とはいえ 素晴らしい工芸品です。


体の反対側の動物たち  LA CONTRAPARTE ANIMAL
マヤにとって動物は単なる自然界の存在という事を超えて、二元論では人間と対極を為し、人間と表裏一体で、話し 考える事も出来る存在でした。 動物はマヤの図像にしばしば登場し、自然の動物として描かれる他、人間の 化身 (もう一人の自分、ワイ = wahyis ) として超自然の動物の姿として描かれたりします。

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 (Figurilla con tortuga, Isla de Jaina, Clásico Tardío 600-900, INAH Campeche)
 (Placa con figura de serpiente, Chichen Itzá, Posclásico 1000-1451, Placio Cantón)

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 (Placa con figura de serpiente) (Vaso con representación de tentáculos y glifos, limítrofe Campeche-Quintana Roo, Clásico Tardío, Museo Maya de Cancún)

マヤの創世神話では 人間が創造される前の世界は空と海だけで、水棲動物は人間の生命と結びついた存在として特に 重要視されます。 カメや、イカ、タコ、ヘビ等は 豊穣のシンボルとしてしばしば登場し、右下の壺にはイボのついた タコの足が描かれ縁にマヤ文字が刻まれます。

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 (Cajete trípode con decoración de un ave, Xcambó, Cajete con decoración de un ave, Yucatán, Clásico Tardío, Placio Cantón)  (Elemento arquitectónico, Clásico Tardío, Museo de Comalcalco)

鳥類は大空と大地、水面を自由に行き来でき、天空や冥界の神々と接触を図る為の重要な存在で、ミミズクや ウ など しばしば擬人化されて描かれました。 右はコフンリッチで建物を飾った水鳥の漆喰彫刻です。

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(Vasija con tapa de jaguar, Sur de Yucatan-Campeche, Clásico Tardío 600-900, Placio Cantón)

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(Escultura de un jaguar sedente, Kohunlich, Clásico Tardío 600-900, INAH Quintana Roo)
(Hacha ceremonial con la imagen de un jaguar, Toniná, Clásico Tardío, Museo Chiapas)
(Plato con la imagen de un tapir, Isla de Jaina, Clásico Tardío 600-900, INAH Campeche)

上段は蓋の取っ手にジャガーが模られた容器です。 毛皮が美しく内に力を秘めたジャガーは しばしば貴族階級に結び つけられ、生贄の儀式などでは貴族はジャガーの姿に変装したそうです。 夜行性であるため冥界のジャガー神 として崇められ、マヤの図像で一般的なテーマになります。 下段左側の石彫りはコフンリッチから、中央の球戯に 関した斧はトニナから、共にジャガーが刻まれています。 右の絵皿にはバクの頭が描かれています。

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(Escultura con la representacion de un pizote, Tenam Rosario, Clásico Tardío, M. Chiapas)
(Figurilla con la efigie de un pizote, Isla de Jaina, Clásico Tardío, Museo Hecelchakán)

次にマヤの人々の生活に密着したハナグマで、種蒔きでは大事な役割を果たし生命の再生にも関連付けられ、マヤ神話 にも登場するそうです。 ハナグマは同時にトウモロコシやフルーツを食い荒らす害獣でもあったそうですが。

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(Silbato con la efigie de un mono, Isla de Jaina, Clásico Tardío 600-900, INAH Campeche)
    (Olla con la efigie de un mono, Yucatán, Clásico Tardío 600-900, Palacio Cantón)

人間に似た姿をして陽気で騒々しいサルは、踊り、歌唱、読み書き等の化身で、知識、学問の守護神とされました。  C神の化身とされるホエザルは宇宙の聖なる存在と会話する役割を負っていたそうです。


神々の体    LOS CUERPOS DE LA DIVINIDAD
神々の体では、残されたマヤの遺物を通して、マヤの人々が崇拝した様々な神、聖なる存在を見よう、という切り口です。  最高位の太陽神から冥界の死の神までいろいろな神が存在した訳ですが、神は沢山いて、一人の神が別の神に 融合したりと、マヤの神の世界の解釈は複雑です。

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 (Figurilla con una Diosa Lunar y conejo, Isla de Jaina, Clásico Tardío, Palacio Cantón)
(Silbato en forma de Diosa Lunar con el viejo dios del inframundo, Isla de Jaina, Clásico Tardío, Museo Hecelchakán)

左は月の神とそれに寄り沿うウサギの土偶、右は月の神にしがみ付く冥界の老神を模った呼子で、マヤの コデックスが立体的になった感じです。

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(Figurillas del dios N. Señor de la naturaleza silvestre surgiendo de una flor, Isla de Jaina, Clásico tardío, INAH Campeche)   (Ladrillo con una figura esqueletica, Comalcalco, Clásico tardío - terminal, Museo Comalcalco)

左と中央はカラーの花から生れ出る N神です。 N神は世界の四隅で天を支えるバカブとして知られます。 右は レンガに刻まれた死の神、A神で、骸骨と肉のそげた手足と膨れた腹が特徴です。

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 (Vasija con la efigie de Itzamnaaj, Chinkultic, Clásico tardío, Museo Chiapas)   (Vasija con la efigie de una cabeza de Chaak, Mayapan, Posclásico tardio, Palacio Cantón)

左はチアパス州チンクルティックからの壺で最高神イッツァムナの頭と体が表されています。 ここまで全て古典期 後期のもの。 右は後古典期になりチャーク神の頭が形作られたマヤパンからの壺です。

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(Vasija efigie de Itzamnaaj sobre tortuga,  Vasija efigie de Itzamnaaj saliendo de un cocodrilo, Mayapan, Posclásico tardío 1200-1550, Palacio Cantón)

これも後古典期後期のマヤパンからで、左はカメの甲羅に乗った最高神イッツァムナ、右がワニの口から現れ出る 同じくイッツァムナ神です。

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(Figurillas de enano, Isla de Jaina, Clásico Tardío 600-900, INAH Campeche y Palacio Cantón)

これは全て小人を現した人形で、小人は宮廷で貴族の世話をすると同時に、神々との取次の役目も持ったようです。

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(Plato policromo con la representación de personaje fantástico, Cajete con tapa y representación animales fantásticos, Isla de jaina, Clásico Tardío, INAH Campeche)

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(Cajete con tapa y representación de animales fantásticos, Jaina,Clásico Tardío, INAH Campeche)


左上の絵皿は空想上の人物が、右上と下の蓋付きの彩色容器には空想上の動物が描かれます。 出土地はハイナ島ですが、 副葬品として納められたもので、製作地はカンペチェ南部からペテン地方にかけてでしょうか。

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(Plato policromo con la representación de los cuatro rumbos y el viento, Plato policromo con la representación de Cauac, el monstruo de la tierra, Isla de Jaina, Clásico Tardío, INAH Campeche)

これもハイナ島からの古典期後期の副葬品です。 左の皿には世界の四方向と風が、右の皿には大地の怪物カウアック が描かれています。

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   (Incensario efigie, Comitan, Clásico Tardío, Museo Chiapas)
        (Portaincensario, Templo XIV, Palenque, Clásico Tardío, Museo Chiapas)

チアパス州の古典期後期の香炉にも神が表された芸術性の高いものがあり、2点展示がありました。 左はコミタンから で、頭に太陽の印をつけた冥界のジャガー神が上にのり、下には蛇の口から顔を出す神格化された若い王が表されるよう です。

右はパレンケ特有の香炉立てで、十字のグループの 14号神殿から。 香炉に表された顔は神ではなく王か貴族のようですが、 パレンケの3守護神の特徴を持った飾りになっているようです。

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 (Esculturas antropomorfas, Chichen Itzá, Posclásico temprano, Palacio Cantón))

最後にチチェン・イッツァのアトランティスで、神殿の支えに使われたものです。 マヤでは天を支える バカブ神ですが、後古典期に入るとチチェン・イッツァでは中央高原のトルテカ様式の影響を受け、トゥーラで 見られるアトランティスの形が広く用いられるようになりました。


以上、なかなか興味深い特別展示で、3月一杯開催されているようです。(2014年)


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展示物は以下の博物館の協力を得て集められていました。

ユカタン地方人類学博物館  Museo Regional de Antoropología, Placio Cantán, Mérida, Yucatán

カンペチェ INAH センター    Centro INAH Campeche
カンペチェ・マヤ考古学博物館 Museo de Arqueología Maya, Reducto de San Miguel, Campeche
エセルチャカン考古学博物館  Museo Arqueológico de Hecelchakan, Campeche

チアパス地方博物館       Museo Regional de Chiapas
チアパス高地文化センター   Centro Cultural de los Altos de Chiapas

コマルカルコ遺跡博物館     Museo de Sitio de Comalcalco

キンタナロー INAH センター  Centro INAH Quintana Roo
カンクン・マヤ博物館       Museo Maya de Cancún