マヤ遺跡探訪
CHAN CHICH
ベリーズ3日目、 ラ・ミルパから更に南へ、チャン・チチ遺跡に向います。 チャン・チチは リオ・ブラボ保護区南の ギャロン・ジャッグ地域にあり、通常ラ・ミルパから1時間の行程ですが、豊かな自然の中 途中何度も停車を余儀なくされます。

チャン・チチの発見は 1987年で、91年以降 マッピングと発掘調査が継続されていますが、まだ調査途上の遺跡です。  マッピング調査で 250を超える建造物跡が確認され、発掘の過程では原古典期後期(150-250AD)の王墓が見つかっています。  盗掘坑からは往時を偲ばせる建物の赤い塗装が顔を出し、整備されていませんが興味深い遺跡ではあります。

チャン・チチとはマヤ語で小さな鳥を意味し、近くの小川 チャン・チチ・クリークが遺跡の名前の由来です。
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     (訪問日 2009年12月1日)
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 (Venado y águila que se encontraba en el camino)

ついつい車を停めてしまう原因はこれ。 野生の鹿は度々姿を現してくれました。 鳥も沢山いますが、なかでも驚いたのは車を 追い越して前方に舞い降りたタカ。 大きな獲物を捕らえたばかりのクマタカの一種で、拡げた羽で獲物を隠しています。   豊かな自然に暫し呆然。

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 (Barrera para entrar a la area de Gallon Jug)

地域一帯は私有地になる為 検問所があり(ラ・ミルパも同様でした)、事前の届出無しには通行出来ません。

ギャロン・ジャッグはベリーズの前身 英領ホンジュラスの時代に木材切り出し拠点だった所で、この地域を含め 全ベリーズの 16% 近くを占める広大な土地を保有していた会社を 1984年にベリーズの富豪が買い取った時から、ギャロン・ジャッグと チャン・チチの新しい歴史が始まります。

画像  (Chan Chich Lodge que se encuentra en la plaza principal)

富豪とはベリキン・ビアとベリーズ・コカコーラを所有する バリー・ボーウェン氏で、取得した土地の中から 550万㎡ を残し 自然保護と観光開発を行っていて、自然観察の高級リゾートとして作られたのが写真の チャン・チチ・ロッジ です。 ロッジの詳細はリンクを参照下さい。

自然観察の拠点はいいですが、食事込み1泊が US$300 以上!、 ラ・ミルパとチャン・チチの貸切ツアー US$200 など比較に なりません。 (^-^;   ツアー代金込みの昼食はまあ高級でした。

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 (Resultado de mapping de la area Chan Chich)

さて高級リゾートで高級昼食を済ませ、いよいよチャン・チチ遺跡探索です。 ガイドについてくれたお爺さんは、包括的な説明無しで 断片的な話ばかり、説明が下手というか、野鳥の案内が専門だったのか、結局 ???の状態で探索を終えたのが実際のところです、 まあ見るべき所は見たのかもしれませんが。

帰国後ウェブで色々検索し chan chich archaeological project で見つけたレポートで初めてチャン・チチについて少し理解が得られました。 レポート には遺跡の地図もあり 本当に目から鱗!

実際に歩いたのは下に切り出した地図にある遺跡中央部だけでしたが、チャン・チチそのものは 広大な広場に東西に伸びる広いサクベ が繋がり、周辺部にも多くの集合体が点在し、中々の規模のセンターだったようです。 全ての建造物は土と草木に覆われたままですが。

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チャン・チチ・ロッジに着いた時に聞いたのですが、施設がマヤの広場を中心に建てられているとの事。 随分乱暴な話だと思いましたが、 入手した地図で見ると、レストランとバーがメイン・プラサにあり、その周りに12棟のロッジが建てられていた事が わかりました。 唖然です。

この広場は儀式やマーケットとして、また広場の西と東の建物で春分、秋分、夏至、冬至の太陽 観察が行われたような説明もあり、どうしてこんな場所に新しい施設が建てられて良いものか!

ロッジのホームページには言い訳と考古学局の許可を得て施設を作った旨が記され、盗掘者の監視にもなると説明されていますが、 違うでしょう!

画像  (Lado norte de Estructura A-1)

探索開始と言いながら大分横道に道にそれたかもしれません。

探索場所は主にアッパー・プラサで、メイン・プラサより 7m 少々高い位置に築かれています。 写真はメイン・プラサとアッパー・プラサを隔てる建造物 A-1 の北側斜面で、ロッジの中心部に面している為、土と樹木ではなく芝生で整備されています。

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 (Estela rota en la plaza)

アッパー・プラサに上がる前に、メイン・プラサにある石碑。 石碑に図像が残るかどうかの前に石碑自体が既に崩れていて、これ 本当に石碑だったの、という感じです。  まあチャン・チチにも石碑が存在したと言う事で。

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 (Escalera para subir a A-1)

建造物 A-1 の西側斜面に写真のような手摺りが取り付けてあり、ここから上に登ります。

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 (Vista panorámica de Plaza Principal)

A-1 に登りメイン・プラサを見下ろすと、円形の大きな建造物がふたつ見えます。 草葺きでマヤ風民家の装いですが、 手前がバー、奥の大きい方がレストラン兼事務所 と現代の建物がマヤの広場の真ん中に!

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 (Resto de los saqueadores)

ガイドさんに導かれてついていくと、盗掘坑が口を開けていました。 登った直後だったので多分 A-1 に掘られた盗掘坑かと思います。  中に案内されましたが…。

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 (Pared pintada rojo de estructura interior anticua)

中に入ってビックリ。 盗掘坑の内部には何と建物の外壁に塗られた当時の彩色がそのまま残っているではありませんか。  どの時代の建物か興味あるところですが、建物は何層かに積み重ねられた筈で、中の方の建物でしょうから 古典期前期に溯る かもしれません。

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 (Otra pared pintada)

こちらの外壁は、赤だけでなく他の色も使い分けて塗色されていたような感じです。 奇跡的に今日まで残されたこうした貴重な 文化遺産も盗掘者にとっては単に邪魔な壁だったようで、無残に開けられた穴は痛々しく とても残念に思われます。

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 (Tumba encontrada durante la excavación)

次に行ったのが写真にある 覆いのついた王墓でした。 後で地図で確認すると王墓は A-1 と向き合う A-15 の前。 アッパー・プラサは 鬱蒼と生い茂る植生の中だったようです。 覆いの向こうの建造物が A-15 という事になりますが、A-15 はアッパー・プラサで一番 高い建造物で、高さは 15.5m あるそうです。

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 (Tumba encontrada)

覆いの下には掘り出された王墓が発掘当時の状態で保存されていました。

チャン・チチの調査は、91年からマッピング調査が行われ、発掘は 97年からですが、アッパー・プラサの窪みを試掘していて、この 王墓に行きついてしまったようです。 

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 (Tumba excavada y conservada)

アッパー・プラサの床面を6層にわたり掘り下げ、2.4m の深さで墳墓を覆う蓋石に行きあたったそうで、横長の蓋石 9枚の内 6枚は下に崩れ落ちていたものの、埋葬された貴族の骨と数々の副葬品は土砂に守られて無事だったそうです。 

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 (Exhiben las fotos de los articulos excavados)

墳墓を保護する覆いの横に ボードが立てられ、回収された副葬品の写真が展示されています。

副葬品には翡翠製品が4点あり(写真右上)、王もしくは支配者の持ち物と推定され、墳墓は王を埋葬したものと理解して良さそうです。  また壷類の様式から年代は原古典期後期の 150-250AD 頃と特定され、原古典期の王権の様子を垣間見れる 非常に重要な発見 と言う事になりました。

副葬品には色の残ったコデックスの破片や王権を示す木製品と思われるものもあったそうです。

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 (Otro edificio saqueado)

別の盗掘坑にも案内されました。 王墓見学の直後なので A-15 の盗掘坑かもしれませんが、定かではありません。

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 (Dos niveles del piso estucado)

上の盗掘坑の断面には、二層にわたって漆喰の床面が認められます。 盗掘者により建造物のカットサンプルが得られた訳ですが、 多くの出土物が持ち去られてしまったのかもしれません。

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 (Sendero en la selva de Chan Chich)

その後何処をどう歩いたのか? 遺跡内に作られた小径の様子です。

左側がガイドのお爺さんで、「これはマヤの薬草で…」という話はあっても殆ど遺跡の詳しい説明は無く、建造物名を含めて ここに記した詳しい説明は殆どウェブで調べた結果です。

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 (King's Tomb, solo señal)

暫く歩いて”王の墓”(King's Tomb) という標識のところにでました。 と言っても名前だけで実際に墓を見た訳ではありません。  地図で確認するとバック・プラサの東 100m 位の所に King's Tomb の表記があり、この辺りまで歩いてきたようです。

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 (Resto de saqueo en la area de King's Tomb)

王の墓 近辺には 上部に盗掘坑が認められるピラミッドがひとつありましたが、滑りそうで中に入るのはやめました。  ガイドさんの案内はここまで。 「これで全部ですか?」と聞くと答えは「イエス」、戻るしかないですね。 でも、もっと 見所はあった筈ですが。

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 (Vasijas policromadas exhibidas en el restaurante de Chan Chich)

レストランに戻り、ベリキン・ビアでリフレッシュ。 高温多湿のジャングル歩きの後、ビールの味は格別です。 考えてみると 遺跡歩きを終えて直ぐにビールと言うのはあまり記憶にありません。 やはり高級リゾート内の遺跡!

レストラン内にはチャン・チチからの出土品が3点飾られていました。 不完全ですがなかなかの彩色土器で、古典期前期あたり のものでしょうか。 完全なものは博物館か、盗掘者から収集家の手に。

チャン・チチは 先古典期から古典期前期に繁栄したようですが、何時頃まで続いたのか? 今後の調査が期待 されるところです。 当初の訪問予定にはなかったチャン・チチですが、それなりにとても興味深い遺跡でした。

明日はベリーズ・シティーにある ベリーズ博物館 とカハル・ペチ遺跡です。


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